「人間ループ」との邂逅

nicechoice2004-06-14

Critters Buggin を観てきた。
やっぱりすごかった。
以前、black frames(Critters Bugginのdrums以外のメンバーによる別ユニット)を観たときには、なんとなく物足りなさを感じたんだけれども、今回のCritters Bugginには文句のつけようがないパフォーマンスを見せつけられた。

会場の代官山Ball Roomは6月から新装オープンした”UNIT”のあるビルの3階と5階を利用したスペースで、3階にメインフロア、5階にチルアウトフロア。
結果的にほとんどメインフロアの方にいたんだけど、休憩のときに上がってみたら、ガムランの演奏とバリの民族舞踊をやってたりして、不思議な空間になってた。

メインフロアはDJ KLOCKによるDJからスタート。ジャズ、エレクトロニカブレイクビーツなんかのレコードをミックスしつつ、スクラッチを織り交ぜたアブストラクトな感じのプレイ。フロアを挟んでDJブースの正面にあるステージ上には、いろんな楽器が所狭しと並んでいる。ヴィブラフォン、タブラ、ティンパニ、エレピにバスクラリネットDJ KLOCKの最後の音が消えるのと同時にステージ上のスクリーンに、黒いローブを纏ったスケーリックがピアノを弾いている怪しげな映像が流れ始める。不気味なアナウンスとともに映像が切り替わり、ステージ裏からメンバーが被り物(レスラーのマスクみたいなやつ)を頭にかぶって登場。シアトル発のバンドにはこういうユーモラスな演出をする伝統でもあるんだろうか?お茶目なんだけど毒がある感じ。
被り物を着けたまま、演奏が始まる。マット・チェンバレンのタムを多用する特徴的なドラムに、ブラッド・ハウザーのベースがからみつき、マイク・ディロンのヴィブラフォンとスケーリックのエレピがその上を漂う。トータス、マイスパレードなんかのシカゴ音響周辺を思わせる音。だんだんと以前のフリーキーな作風からは移行しつつあるのだろうか。と思ったのも束の間、スケーリックがサックスを手にした瞬間、あの凶悪に歪んだ音色が耳に飛びこんでくる。やっぱ、いいなぁこの人たち(笑)。会場全体が興奮に包まれる。マイク・ディロンはタブラやコンガなどあらゆる打楽器を使いこなし、マット・チェンバレンのドラムと競い合うかのように強烈なリズムをたたき出していた。30分ほどの休憩を挟み、2nd ステージはスケーリックがサックスでクチャクチャとガムを噛むような音を延々と出しつづけるパフォーマンスからスタート。その後はなだれ込むようにドローン的な展開に。サックスの音をループさせ、パワーブックでノイズを出す。かなり長い時間ドローンを弄り倒した後、音を流したままメンバーはいったんステージを去る。
アンコールで再び登場し、今度はインプロヴィゼーション。ワウをかけたエレピでスケーリックがエレクトリックマイルスっぽいコードを弾き始めるとリズム隊がそれに合わせ、アガルタ・パンゲアのような展開になった。アンコールはあらかじめ決めておいた楽曲はほとんどやらずに、その場で各プレイヤーが音を合わせていくという感じ。それだけにセッション的な雰囲気が肌で感じられ、とても楽しかった。

それにしても、凄いのは「人間ループ」の異名を持つマット・チェンバレンのドラムだ。black frames を観たときに感じた物足りなさは明らかにドラムスの弱さだったのだと再確認させられた。タム、スネア、キックすべての音が凄まじい抜けの良さ。それに加えて恐ろしく正確無比なリズムで刻まれるビート。休憩を挟んで3時間半以上の間圧倒されっぱなしだった。

Critters Buggin'の新作"stampede"はp-vineから日本先行発売予定。これも良さそうなので買おうと思う。